山口県立美術館で開催された「没後50年 香月泰男のシベリア・シリーズ」を見に行きました。没後50年を記念して、同シリーズの全57作品を全て展示する企画ですが、絵と共に残された言葉を読みながら絵を見ることで、シベリア抑留の経験がどのように影響したのか、画家がどのような部分に注目するのか、大変に理解の助けになりました。
方解末で整えたキャンバスに木炭で書かれた「シベリア・シリーズ」は、キュビスムの影響を強く感じながらも、色彩が抑えられ独自性を感じました。表現したいことのために、最適な手法を選んだという感じでしょうか。シベリア抑留という状態を思い出しながら書かれた作品は、ほぼ希望もないはずなのですが、シリーズを通して見ていくことで、なぜか希望を感じてしまうのは不思議でした。
これは抑留生活中も将来的に絵を描くためのスケッチを残していたり、何か絵になる題材はないかと探していたその意識が、希望を感じさせるのかと思いました。悪い状況になった時の気持ちの切り替えはよく言われますが、後に昇華させるための種を蒔いておくことも大切ですね。