山口情報芸術センター(YCAM)が開催している「Yamaguchi Seasonal 2024」の一環として実施された、常栄寺での坂本龍一「Forest Symphony」と、サテライトAでの大友良英+青山泰知+伊藤隆之「without records」という2つのインスタレーションを見てきました。「Yamaguchi Seasonal」は山口情報芸術センターが持っている資産を他の場所で活用しようという取り組みで、作品が公開された当時とは違った場所に設置されることで、新たな要素が加わっていました。
坂本龍一「Forest Symphony」は世界各地の樹木の生体データからサウンドを生成しているインスタレーションで、元々は無機質な展示室で自然を感じられるというものです。今回は「雪舟庭」を眺められる場所での展示となり、人によって作られた音を、人により造られた「雪舟庭」を見ながら、また、蝉やなどの虫の声や風の音と共に聴くことで、さらに自然を感じるという、面白い展示となっていました。
音の生成には木の生体電位、温度や湿度、日照量などの変数が使用されており、現在の音の生成にどのようなデータが使われているのかを見ることのできるモニタも設置されていました。1ミリ秒のオーダでデータが使われており、これを聴いている時と同じような時期のデータから、音が生成されているとのことでした。データ収集からしてもかなり大掛かりで、こういう事をしようと思えることに価値があります。
この日は午前中に雨が降ったおかげで気持ちのいい風が吹き込んでおり、夏の時期に体験するにはとても良い日だったようです。他に人もいなかったのでボーッと雪舟庭を眺めながら過ごさせていただきました。また、説明してくださるスタッフの方がおり、疑問点を質問させていただいたり、理解するための手助けをしていただきました。
大友良英+青山泰知+伊藤隆之「without records」はワークショップで改造されたレコードプレイヤをランダムに鳴らすインスタレーション。ワークショップでレコードプレイヤに触れ、それが作品として動いていることを見る、一連の流れが不可欠な作品かと思います。ただ、久しぶりに色々なレコードプレイヤが動いているのを見ると、そういえばこんな装置だったなと懐かしい気がしました。今の30代まではほぼ触れていない、過去のメディアに触れるというのは、きっとそれだけで貴重な機会なのでしょう。
ランダムなはずのものの中である程度の時間を過ごしていると、なぜか周期性を感じることがあり、展示の中を音が鳴っている方に向かって歩いているだけでも面白く感じましたが、やはりこういうものは自分が関わってこそですね。
こういったイベントができるのも「山口情報芸術センター(YCAM)」という施設があってこそ、もっと小規模なものでも、正しく中心となるものが田舎にもあると良いのですが。