ひろしまオペラルネッサンスのG.プッチーニ作曲オペラ公演で、「修道女アンジェリカ」と「ジャンニ・スキッキ」を観てきました。真逆とも言えるような悲劇と喜劇の組み合わせで、休憩を挟み雰囲気が大きく変わり、爽やかな気分で帰路に着くことができました。
舞台セットはベックリンの「死の島」を模したものになっており、特に開演前はそのイメージが明瞭になるよう人形が置かれていたりと、凝った演出がされていました。「修道女アンジェリカ」と「死の島」はつながるものがありますが、「ジャンニ・スキッキ」には状況くらいしか繋がらないかと思っていたところ、演出家の方がプログラムに書かれていた言葉を後で読み、納得させられました。
公演自体に大きなテーマを定めて、それを美術でも表現できるのはオペラの大きな魅力の1つです。こういった姿勢をもっと他の公演にも適用できれば面白いと思うのですが、なかなかそれを考えている時間がないというのも正直なところ。上手くはまっているものを見ると嬉しくなります。
「修道女アンジェリカ」は初めて見ましたが、最初から音響効果が面白く、こういう聴かせ方もあるのだなと気付かされました。ただ、舞台が修道院ということもあり、登場人物が全て女性で同じ音域の声ばかりなので、イベントは起こりつつも、どうも起伏なく進んでいく印象がありました。ただ、これはほぼ一人劇になる後半での畳みかけるようなシーンと良い対比になっているのかという気もしました。
「ジャンニ・スキッキ」はまさに「ジャンニ・スキッキ」、掛け合いなども上手く音楽的に表現されており、ずっと音楽を聴いていました。休憩と開演がわざと分かりにくくされていたのですが、それもこのドタバタ劇には合っていたなと感じました。通常通りに幕が開いて悲しんでいるシーンから始めると、前半の「修道女アンジェリカ」を引きずっているような気もします。
1つの公演を通して、とてもバランス感に優れた公演だったように感じます。これは3部作として作ったプッチーニの意図したものもあるのでしょうが、細かな演出も巧みだったのではないでしょうか。せっかくなら3作全て通して見たかったですが、公演時間の都合で2作だけの公演になったのでしょうか。残りの1つ「外套」もいつか見てみたいと思います。