2017年は籔の中で勝手に「アジアシリーズ」、その第一戦として「Ultra-Trail d’Angkor(Bayon Trail Angkor)」に出場してきました。レース中ほとんどの時間で気温が30℃を超え、最高気温は32℃。それでも湿度が低いからか、暑さは想像していたよりも楽に感じました。辛かったのは日差し、直射日光が続く区間は倒れそうな程でした。
山は「Phnom Bok」という標高221mと低い山が1つしかなく、更に地上の標高が40m程度あるので、実質的には180m程度しか登りません。他はほぼ平坦ですが、62kmで制限時間が12時間のレースなので、最低でも5.17km/hの平均速度で走らなければなりません。平坦ですし、ロードや林道の多いレースかと思っていたのですが、実際には草が体に触れるほどのシングルトラックも多いですし、飛び道具的な渡渉などもあり、山を登るだけがトレイルランでは無いと思い出させてくれたレースになりました。
大会概要
- 大会・・Ultra-Trail d’Angkor(Bayon Trail Angkor)
- 場所・・Terrace of the Elephants, Angkor Thom(カンボジア)
- 日時・・2017/01/21
- 距離・・62km(獲得標高 330m)
- 天候・・天気:晴れ 気温:29℃(スタート時)
- 結果・・11時間41分56秒 71位(86人中)
区間タイム(時:分:秒)
区間 | 区間距離 | 区間時間 | 合計時間 |
Start 〜 8.5km地点 | 8.5km | 1:06:03 | 1:06:03 |
8.5km地点 〜 17.5km地点 | 9km | 1:12:50 | 2:18:54 |
17.5km 〜 Phnom Bok(30km) | 12.5km | 2:40:37 | 4:59:31 |
Phnom Bok(30km) 〜 Banteay Samre(37km) | 7km | 1:23:10 | 6:22:41 |
Banteay Samre(37km) 〜 Eastern Mebon(43km) | 6km | 1:19:17 | 7:41:58 |
Eastern Mebon(43km) 〜 Prasat Kravan(51km) | 8km | 1:43:39 | 9:25:37 |
Prasat Kravan(51km) 〜 French Bridge(57km) | 6km | 1:22:53 | 10:48:30 |
French Bridge(57km) 〜Goal(62km) | 5km | 0:53:26 | 11:41:56 |
合計 | 62km | 11:41:56 |
使用機材
平均気温が30℃を超えるようなレースは初めてでしたので、何を持っておけば良いのかよく分からず。日差しが強いので、できるだけ体を隠すような装備で臨みましたが、これは棘や虫に対しても有効だったかなと。グローブで守られていない指先に2回棘が刺さりましたが、虫さされは無し。走っているときは蚊も含めて、ほとんど虫を見ませんでした。
ザックは3Lの小さいもので行こうと思っていたのですが、前日に暑さを体感し、1L以上水分が必要だと判断して、11.5LのUltimate Direction「AK MOUNTAIN VEST 3.0」に変更。いざという時に背中にペットボトルを入れられるようにしておいたのですが、水を購入できるところが多いので必要ありませんでした。フロントのボトルポケットにはエイドで支給されるVittelの500mlペットボトルを入れ、エイドではそれを新しいものに交換するだけ。7箇所あったエイドですが、滞在時間は合計で2分くらいかなと。500mlペットボトルで飲み物が支給される大会では、こういったペットボトルが使えるザックが便利です。
シューズはasics「TARTHERZEAL TS 3-wide(26cm)」というロード用の物で走りました。滑るようなコースではないので、軽さの利点が生きて良かったです。ただ、耐久性には問題あり。40km程度走ったところでソールとアッパーの間が剥がれてしまい、砂が入り放題に。やはりトレイルシューズは耐久性も向上されているのかなと思いました。水に足が浸かる場所も何箇所かありますし、次に出るなら出来るだけ軽いトレイルシューズで走ると思います。
- シューズ・・asics「TARTHERZEAL TS 3-wide(26cm)」
- シューレース・・ツインズ「キャタピラン 75cm」
- バックパック・・Ultimate Direction「AK MOUNTAIN VEST 3.0」
- GPSロガー・・EPSON「MZ-500」
- タイツ・・CW-X「スタイルフリーボトム ロング(L)」
- ハーフパンツ・・モンベル「 トレールランニングショーツ Men’s(M)」
- アンダーウェア・・UNDER ARMOUR「ヒートギアコンプレッションステルスLSモック(L)」
- シャツ・・SALOMON「AGILE SS TEE M(S)」
- ソックス・・武田レッグウェアー「TRR-120G(M)」
- キャップ・・SALOMON「XA+CAP」
- グローブ・・Salomon「XT WINGS GLOVE WP(L)」
- アイウェア・・OGK KABUTO「ビナートZ(スモーク)」
- ライト・・Black Diamond「Ion LED Headlamp」
- ゼッケンベルト・・Nathan「Race Number Belt」
- 補給・・wiggle nutrition「energy gel」12個
- 補給・・ミドリ安全「塩熱サプリ」18粒
- サバイバルブランケット・・Adventure Medical Kits「SURVIVE OUTDOORS LONGER EMERGENCY BLANKET」
- テーピング・・New-HALE「AKT 5m×7.5cm(1m分)」
- ホイッスル・・ザック付属
- 携帯電話・・Apple「iPhone 7」
レース展開
Terrace of the Elephants(スタート) 〜 17.5km地点
前日に観光しながら体感気温を気にしていたのですが、太陽が出る7時からは既に暑く、9時には走れない状態になるだろう。逆に、日差しが弱くなる16時からは再び走れるだろうと予想。スタートからの2時間で行けるところまで距離を伸ばしておこうと、スタートから少し無理をして進みました。
スタート前には地図の前に選手を集めてのブリーフィングがあったのですが、みんな背が高いので地図が見えません。ちょっとお腹が痛い気がしたので、トイレへ行ってからスタート。トイレまで往復500mあったので、スタートに遅れそうでした。スタート前にトイレダッシュをしたので、心拍数180bpmとかなり高めのスタートとなりました。
スタート後は少しだけロードを走りますが、すぐにシングルトラックへ。前半はオーバーペースなのは分かっていますが、少しでも進んでおきたいので180bpmに届かない程度で前について行きます。今回はBlack Diamond「Ion LED Headlamp」という小さくて軽いヘッドライト1つで行ったのですが、1時間程度しか使わないので十分でした。ただ、一人になるとマーキングを見落としそうなところも多かったですし、ジャングルに入って行くような場所も少しだけあったので、それもあってのオーバーペース。
約11kmにあるシェムリアップ川を渡るところで日の出に。スタートから1時間半の6時半、ちょうど日の出時間でした。周囲に山がないのですぐに明るくなります。ここでライトを片付け、サングラスに変更。ザックを下ろしたのはこの1回だけでした。日が昇るとすぐに眩しくなります。
ここからは日本でいう林道のような感じでしょうか、まっすぐな道が続きます。硬い地面だったり、砂浜のようにフカフカした感じだったり、色々な路面状態があるので、なかなか走りにくい。こういう所は苦手ですし、何より暑くなってきたので、少しペースを落として進みます。暑くなってきて疲れてきたところで2つ目のエイドへ。どこも水とバナナだけかと思っていましたが、ドライフルーツ(レーズン?)が追加されていました。
17.5km地点 〜 Eastern Mebon(43km)
全体的に砂浜のようなトレイルを抜けて先へ。足が取られて重いのと、9時頃になり気温が上がってきたのもあり、かなり歩きを交えて進むことに。嬉しくないことに、走れなくなる時間もだいたい予想通りでした。マーキングは全コースを通してしっかりと付けられており、ボーッとしていなければほぼ迷うことは無さそう。このコースにこれだけのマーキングをして行くのは大変だろうなという感じでした。
道も分岐が悪いトレイルを進んでいると川を渡るポイントに。周囲の状況からしてもこの大会のために作った橋では無さそうなので、普段から使われているのでしょうか?渡り始めるとよくしなるのですが、途中で折れそう。カンボジアの危険動物について一応は調べていたのですが、実際のところはよく分からないので、ワニとかいないよねと心配に。後ろから来た選手に写真を撮るから止まってと言われ、怖い時間が倍増しました。
トレイルを抜けると街へ。曲がらないといけないところでコースマークを見失ってまっすぐ行ってしまったのですが、横にあった小学校らしき所から、子供達が大声で道を教えてくれました。一クラスほぼ全員が窓から身を乗り出して教えてくれたのですが、授業は良かったのでしょうか?この辺りから赤土の場所が増え始め、車などが通ると砂埃を巻き上げて行きます。
村を抜けるとこの日唯一の山「Phnom Bok」が目の前に。標高200m程度なので丘という雰囲気ですが、この日初めて見る背の高いものなので新鮮。田園地帯を抜け、回り込むように近づいて行きます。
山登りは階段での直登、約180m登ります。時間的にも10時前でかなりフラフラ、少しずつ階段を登って行きました。籔と同じように季節が冬の国から来た人達はゆっくり、年中夏な国から来た人達は元気と、完全に分かれている感じでした。登りの様に負荷がかかるところでは、暑さ耐性の差が顕著に出て来ます。
山頂では観光地価格のUSD1で冷たい飲み物を売っていました。もうヘロヘロで、このレース中で唯一座って休んだポイントです。見渡す限り何もなく、地平線が見えます。
山からの下りはなだらかなトレイル、下り切ったところにエイドがありますが、水だけ貰って先へ。ここから次のエイド(Banteay Samre 37km地点)までの7km区間はほぼ写真のような林道が続きます。とても走りやすいのですが、暑くてよたよた走ったり歩いたりの繰り返し。生活道路らしくて、たまに自転車やバイクに乗った人とすれ違うくらいでした。
ようやくエイドを見つけたと思ったら、先に遺跡(Banteay Samre)をぐるっと回ってこいとの事で再スタート。遺跡だらけなので、ちょっと寄り道して遺跡を一周というコースが多かったように思います。ちょうどフランスからの観光客団体がいて、写真を撮っていると囲まれてしまいました。どのくらい走るのかとか、どんな大会なのかとか、ちょこちょこ走っていく人がいるので気になっていたようです。
遺跡を一周してたどり着いたエイドには、Vittelとバナナの他にスイカが。苦手なので、もちろん水だけ貰ってスタート。「次のエイドまで6kmだから余裕余裕」と言われて出発したのですが、次の区間が最もキツかったです。
ここからは一気に田園風景。少しロードを走ると、ヤシの木の間を通るコースへ。ヤシの木は涼しそうなイメージがあったのですが、影が出来なくてとても暑いです。周囲に気も無くなって、完全な日向に。
次の田園地帯では用水路のようなところにコースマークが、なかなか挑戦的なコースです。本当にここを通るのかと思いましたが、前後に誰もいないので確かめようが無く、覚悟を決めてバシャバシャと。
後は林道をつないでいくとEastern Mebon(43km)のエイドへ。大型観光地なので人がたくさんいて賑やかでした。残りは21kmですが、4時間ちょっとしか残っていなかったので、ここからはかなり焦り気味。常に時計を見ながら動くことになります。
Eastern Mebon(43km) 〜 Goal(62km)
道路は基本的に舗装されていないのですが、ここは大きな観光地なので舗装されていました。トゥクトゥクもたくさん通るのですが、涼しそうで良いな・楽そうで良いなと思いながら、出来るだけ早歩きで前へ。
細いトレイルや田んぼの中を走ったり、林道になったり、川を飛び越えたりと、かなりバラエティーに富んだコースに。トレイルも草をかき分けながら進むところもありますし、なかなかペースが上がりません。そういえばカンボジアにはコブラが生息していたよなとか思い出しながら、いつもより足元注意です。
そうこうしていると目の前に川が出現。後から地図を見てみると「Prasat Bat Chum」という遺跡のお堀だったようです。川に出たのでコースを間違えたかと思って見回すと、対岸にマーキングを見つけてがっかり。諦めてザブザブ行きましたが、腰まで水深がありました。
川さえ超えてしまえばもう凄いところは無く、集落を抜けてPrasat Kravan(51km)のエイドへ。このあたりの家は高床式になっているところが多く、新築されているところも同じ作りでした。一家揃って家の下にいるところが多いので、沿道では応援を受け放題です。
Prasat Kravan(51km地点)のエイドで残り距離を聞くと次のエイドまで6km、そこからゴールまで6kmという事で、残り時間2時間半だとギリギリいけそうな感じ。もう少ししたら気温が下がって走れるようになると思い、無理しない程度に前へ。まだ発掘されていない遺跡の横を通るトレイルや、遺跡自体をぐるっと回ったりと、意外と時間がかかるルートで焦りました。また、途中で足を攣って転けてしまったのですが、近くにいたトゥクトゥクの運転手さんが「タイガーバーム」を塗ってくれようとしました。籔が接した範囲では基本的にみんな親切で、しっかり対応してくれるなという印象。後ろから来たランナーが足を伸ばしてくれ、なんとかリスタートです。
最後のエイド「French Bridge(57km)」に着いたのは制限時間の1時間前。ここから6kmを1時間で走るのは難しいだろうと思ったのですが、行けるだけ行ってみようとすぐにスタート。周りのランナーは諦めている人・行く人が半々という感じでしょうか。エイドの椅子がちゃんとしたもので座ってみたかったのですが、最後まで座れませんでした。
最後のエイドからはとにかくペースアップ。脚はもちろん、腹筋や背筋など全身が攣りそうだったのですが、とにかくペースを上げるしかないので、なんとか走るという状態。赤土のまっすぐな道を、手元の時計を見ながら少しでもペースが上がるようにプッシュして行きました。ちょうど時間的にも16時になっていましたし、最後の区間が全て影になっていたのも助かりました。
ゴールであるアンコール・トムの敷地に入るところにある門を抜けると残り2km。どうやら最後が6kmという情報は嘘で、コース変更によって5kmになっていたようでした。45分で2km進めばいいので余裕。観光していた人と少し会話をすると、この門は「死者の門」だと教えてくれました。確かに、籔は今にも倒れそうな感じでしたが、なんだか縁起が悪い。すぐ近くに「勝利の門」もあるらしいので、どうせならそちらから帰って来たかったなと。
せっかくなので最後まで頑張ろうと、最後の区間も出来るだけ走ってゴール。ゴール前は今にも全身攣りそうだったのですが、ちょこちょこ一緒に走っていたタイ人K氏が体を支えてくれ、なんとか歩かずゴールできました。
通常のトレイルレースのように山が無い代わりに、ゆっくりとしていられないレースなので違う大変さがありました。また、暑さも大変で、数日いたからといって慣れるようなものでは無いでしょう。そんな過酷なレースでしたし、平坦なところが多いのでウルトラマラソン的な要素もあるのですが、運営もしっかりとしていますし、コースも変化に富んでいて、確実に楽しいトレイルレースでした。
その他の写真はこちら UltraTrail d’Angkor(Bayon Trail Angkor) 写真
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